電波振動におけるEMG数値の改善例

2022年1月11日

要旨

 これまで手技療法の業界は、多くが経験的側面で施術を行ってきた。それらは個別の受け手側に寄り添った施術が行える一方で、結果の再現性に乏しかったのも事実である。手技療法が科学的側面で語られないのは、我が国における法的側面が大きい。例えば、諸外国のカイロプラクティックでは、診断権を有するところもあり、科学的分析を行うことで同時に結果の分析も行えた。ここでは経験的側面と科学的側面のどちらが優れているという無意味な議論をする気は毛頭ないが、とはいえ我が国においても一定の基礎レベルでは再現性が尊重されなければ業界としての発展性は見込めないと著者は考えている。今回の研究は、誰でも再現性が得られる筋電計と電波振動器を基に、体のどの部分にアプローチをすれば、筋電計において改善値を示すのかの実験的研究である。そのため、手技療法は一度封印する。手技は厳密には数値化できない要素を多く含んでいるからであって、決して結果を否定しているわけではないことは述べておく。

はじめに

 筋肉は、ミオシンとアクチンによる収縮タンパクから構成されており、これらが束になった筋繊維の収縮活動によって、全身の骨格に動きが表現される。この収縮タンパクの活動を可能にしている出発点は、脳や脊髄から発生される中枢神経インパルスの伝達によって、電気的な活動指示が筋繊維まで到達するからであって、筋肉そのものが自発的に収縮タンパクを活動させているわけではない。また、筋肉については運動の再現性ばかりに着目されがちであるが、日常生活において、例えばデスクワーク時や起立時の姿勢維持においても、無意識下で脳から筋肉へと電気的神経インパルスを送り続けている。この筋肉の活動状態は、筋繊維が収縮することで硬くなることから、筋硬度計によっても緊張状態を数値化することは可能であるが、筋肉そのものの大きさや太さといった、人それぞれの個体によって不同であるものを比較することは容易ではない。また、筋硬度計は物理的に外力を用いて器具を体表から計測対象の筋肉へ押し込む抵抗値として計測されるため、同一部分を同一角度で抑えることに対して再現性の担保がされていない。従って、上記のメカニズムから、筋電計(EMG=Electromyograph)によって筋肉そのものから発する活動電流を電気的に計測する方法が、合理的かつ客観的に筋活動値の全体像を知れるといえよう。本実験は株式会社エバートロンが開発したBody-Station(Pro用)によって、50Khzの電波振動を体に当て、使用前と使用後でEMG値にどの様な変化を及ぼしたのか、その一例をご紹介する。

筋肉の活動

 脳は電気的に全身へ指令を出す。これを遠心性インパルスと呼ぶが、全身の筋肉も同様に大脳皮質の興奮を運動神経という形で骨格筋へ遠心性インパルスによって伝達されている(脊髄反射は生命保護機能であるから大脳を経由せずに脊髄と筋肉間でより迅速に活動する)。運動神経の走行は、脳から脊髄を経由し、各骨格筋へと枝分かれして行くが、末梢部分では神経と筋肉が直接的に同化しているわけではない。筋肉部分では神経筋接合部(終板)と呼ばれるシナプス構造を有し、電子顕微鏡レベルで約50nmの間隙を生じる。中枢神経からの神経伝達がこの終板に到達したとき、神経末端の小胞にあるアセチルコリン(ACh)=神経伝達物質がこの間隙内に放出される。筋肉側にはこの神経末端の小胞から放出されたアセチルコリン(ACh)を掴むアセチルコリン受容体(AChR)が存在し、アセチルコリン(ACh)がアセチルコリン受容体に受け取られた数に応じて、より末端の筋繊維側へと電気的伝達が可能となる。その後、筋繊維は脱分極と呼ばれる現象において興奮する仕組みとなっている。脱分極とは、静止膜電位と呼ばれる安静電位-80~-90mVの均衡状態が、ナトリウムイオン(Na+)の細胞内取り込みによって安静状態が崩れることで起こる。重症筋無力症において筋力喪失を引き起こしてしまうのは、この筋肉側のアセチルコリン受容体に対し、自己免疫が反応して不可逆的な受容体破壊を繰り返すためである。また、神経末端の小胞から放出されたアセチルコリン(ACh)を、筋肉側のシナプスで集合させる役目を持つ筋特異的チロシンキナーゼに対しての自己抗体を持つこともある。

 さて、なぜこのアセチルコリン(ACh)について触れたのかといえば、中枢からの神経伝達は、シナプス構造内に病的な疾患がない限り、筋肉の大きさ、太さや硬さに関わらず、脱分極によって筋細胞内が+30mV~+50mVで筋収縮の活動状態に入るからである。つまり、この筋細胞におけるV(ボルト)を読み取ることで、筋肉の個体差に乱離されることなくこの活動状態を数値化できるというわけだ。

使用した筋電計器

 筋肉は無数の筋繊維によって構成されている。1本の筋繊維の長径は、太さは10~150μmの径を有しており、長さは1~300mmほどである。これらが束となって複合的に活動電位に達した時、皮膚を介して体表から計測器によってこの電気を読み取る。しかし、皮膚の上から感知できる電気は、筋繊維の束で発生した電気の1/1000程度と極わずかである。よって、計測器の制御装置内で、これを任意に増幅させてグラフ化させる仕組みとなっている。この装置を筋電計(EMG=Electromyograph)と呼ぶが、今回の計測に使用したEMGは、米宇宙財団と米航空宇宙局(NASA)の認証を経たインサイトディスカバリー(以下EMG)の機械を採用した。これを使用している大学、教育機関は、Cleveland College、Life College、Life College West、McTimoney College, England、New Zealand College、Northwestern College、帝京科学大学などがあり、スポーツの分野ではNBAバスケットボールチームのHouston Rockets、Philadelphia 76ers、メジャーリーグではSan Diego Padresなども採用しており、臨床の場でも広く活躍している装置である。

 

 

使用した電波振動器

 株式会社エバートロンのBody-Station(Pro用)によって、筋肉へ50Khzの電波振動を誘導させる。この装置は、水分子を極小化させる性質があり、その徴表は株式会社エバートロンによって特許が取得されている。正確には筋肉へのアプローチではなく、筋肉内及び組織間液における水分を、50Khzの電波振動で極小化させた場合、どの様な変化が見られるかという観察的実験である。

EMG(インサイトディスカバリー)
EMG(インサイトディスカバリー)
電波振動装置(株式会社エバートロンBody-Station(Pro用))
電波振動装置(株式会社エバートロンBody-Station(Pro用))

実験方法

 Body-Station(Pro用)による電波振動を開始する前に、EMGによって被験者の下顎角から上方約0.8インチ、前方約0.8インチ付近の咬筋の数値を計測する。咬筋を使用する理由は三つある。一つ目は、全身の筋肉は姿勢などによっても筋肉は活動するため、計測前後で僅かであっても姿位を変えてしまえば、計測前と同条件の計測ができない。よって、姿勢に影響を受けづらい咀嚼筋の左右咬筋を使用する。二つ目は、第V脳神経の三叉神経第三枝である下顎神経支配によって活動されている筋肉であるということ。骨格筋は脳から脊髄を経由して走行しているが、脳神経は直接脳から神経が走行しているため、それゆえに外部からのアプローチで容易に影響を受け難い。三つ目は、咀嚼筋は睡眠時の歯ぎしりにある様に、無意識下での全身の緊張を出現させる場所でもある。よって、精神的ストレスの軽減とも関連付けられる。これらの理由から、ハードルは高いが脳神経経由の咬筋を実験部位に使用した。

実験結果

 電波振動を与える前の被験者のEMGグラフはFig.1である。被験者の計測姿勢は座位であり、足の踵は地面に当たらずに浮かした状態で15秒間のダイナミックEMGによって計測した。EMGグラフの赤線は右咬筋、青線は左咬筋を示す(Channel項目にはシステム上で顎の選択項目が無いため便宜上CervicalsとUpper Thoracicの項目を使用)。赤線の右咬筋の15秒間平均値(Mean)は19.5μV(最小6.3μV~最大28.0μV)を示した。一方で、青線の左咬筋は15秒間平均値(Mean)で22.7μV(最小16.8μV~最大27.8μV)であった。15秒間平均値の比較では、青線が赤線よりも3.2μV高く、よって筋肉の活動=緊張状態は左咬筋の方が強いことが分かった。次に被験者を仰臥位の状態にさせ、株式会社エバートロンのBody-station(Pro用)を用いて、左右の頸部の筋肉に対して右10分、左10分の電波振動を与えた。なぜ頚椎を選んだのかという理由だが、計測前に全身を触知した結果、頸部の筋緊張が最も明確にあったこと、そして顎の開口時における運動の中心軸は頚椎の2番の歯突起付近に存在するからである。左右の頸部後面の筋肉は、主に後頭下筋群、頭半棘筋、頭板状筋、肩甲挙筋、僧帽筋であり、これに対して左右で合計20分間電波振動を与えた。その後すぐに、座位の状態で再び15秒間のダイナミックEMGによって計測をした結果、Fig.2に示した通り赤線における右咬筋の平均値 (Mean)は7.6μV(最小5.3μV~最大10.5μV)となり、青線の左咬筋の平均値(Mean)は9.0μV(最小7.8μV~最大12.4μV)であった。平均値比較では、赤線の右咬筋は電波振動を与える前の比較で11.9μVの減少で、青線の左咬筋は13.7μVの減少が見られた。左右比較の平均値では、電波振動前の3.2μVから電波振動後には1.4μVまで減少する結果となった。

考察

 咀嚼筋は全身の緊張の写し鏡である。脳神経の直接支配を受ける咀嚼筋において、EMG数値の減少を示したことはとても興味深い結果であった。通常であれば、マッサージや鍼、整体、カイロプラクティックなどの刺激療法によって筋緊張にはアプローチされてきたが、電波振動でもそれらに近いことが再現できていると予測ができる。それどころか、昨今の歯科領域において、顎関節症や歯のくいしばりなど、未だに咀嚼筋の緊張から起こる障害の根本的解決策は見出せておらず、そういう意味においても本実験結果は興味深いものがある。なぜ電波振動で筋肉に変化が現れたのかは仮説の域を脱しないが、著者の経験的推測からすれば、二つの理由が考えられる。一つは、循環促進要素である。循環とは血管における血液循環の他に、細胞間を流れる間質液の循環もある。株式会社エバートロンが公表している数値では、水に50Khzの電波振動を与えることで、水分子を8~2.5μmまで極小化させることができるとある。これにより、細胞間の12μmは水分子が小さくなることで細胞間の通過が容易になることが考えられる。つまり、リンパの流れが促進される可能性が示唆される。また、50Khzの電波振動を受けた水は、界面活性が60%減少すると同社の開示もある(2016年国立研究開発法人産業技術総合研究所と東海大学との共同研究成果として学会発表)。これらを総合的に引照すると、筋肉全体の循環が促進され、筋肉内の乳酸などの代謝物が流れやすくなったことが考えられる。もう一つは振動による作用である。装置を付けてみればわかるが、とても微細なチリチリとした振動を触知できる。 物理学で思慮すればわかることだが、振動は粒子の整列化を促進させる。これらの要因によって、身体で最も筋緊張が強かった頸部が直接的に弛緩され、結果、無意識下における脳神経支配の咀嚼筋が緩んだと推測される。本実験は症例数を増やし、同じ結果が繰り返し再現されるか、同方法で引き続き実験を行いたいと思う。

追記:2022年1月12日13日ー同条件下で新たに3名の実験を行なったがいずれも同じ傾向の結果が出た。

*本文は六本木GEN流院によって試験実施をして作成されたものです引用には許可が必要です

*Body-Station Pro用につきましては当院へお問い合わせください