心拍、脈拍、体温など、身体は環境に適応するために、必要に応じて調節を行います。例えば、階段を登る場合、筋肉に必要な酸素や栄養を送りやすくするために、脈拍数を上昇させます。そして、階段を登り切って安静状態になると、脈拍は徐々にもとの状態へと戻ります。この働きは、意識的に考えて起こした働きではなく、自動的に働いているものです。これを「生体恒常性」と言います。恒常性は、「常に一定の状態へ戻る働き」であり、あらゆる身体反応にも関与しています。それは、内臓の働きであったり、温度調節であったり、傷や病気を治す修復作用もその一部です。広義では、恒常性=一定の安定状態に戻る作用でもあり、均衡状態を保とうとする自然の摂理そのものでもあります。
例えば、環境の変化に対して、自分が最適な安定状態へと維持する能力も同じです。このことから、生物全体にも言えることであり、また、物質にも同じことがいえます。極論ですが、この環境変化が身体能力(恒常性)を超えた場合に、我々の体は生命維持が不可能となり、また物質も組織として今までの形を失います。
我々の体の中の一定環境とは何かといえば、表面的に観察できるものから、内部の見えない働きまで無数にあります。表面的に観察できるものを例に出すと、体温などは分かりやす恒常性です。昔、理科の教科で「恒温動物」「変温動物」という分類について聞き覚えがあると思います。我々人間の場合、体温は外部環境によって変化を起こしませんから、恒温動物です。一方で、変温動物は、外部環境に適応するために自分の体の温度を変えてしまうことで生命維持を図ります。無脊椎動物は全て変温動物であり、タコやイカ、昆虫もそれに該当します。
我々は脊椎動物であり、恒温動物です。つまり、外部環境に変化があったとして、体内の機能によってそれを一定に保ちます。例えば、外気温よりも体温が高くなる場合には汗が出ます。これによって、毛穴を開き、表面の毛細血管を拡張させ、外気と当たる面積を増やします。汗が蒸発する際には熱を奪います。これを「気化熱」と言いますが、この原理を利用して体温を下げ、我々は外気温の変化に対して環境適応を行います。また、それとは逆に、外気温が体温を下回る場合には、毛穴を閉じて(鳥肌)、体内の温度を出来るだけ外部に放出しない環境を作りあげ、同時に、震えなどの筋収縮によって起こる「熱生産」を活用し、体内の温度を維持しようとします。 この様に、我々の体は外部環境に対して適応できる様に、無意識下において「生体恒常性」を働かせてくれているわけです。
当院の特許技術は、恒常性の働きが乱れていないか、客観的に数値化をすることが可能な装置です。人間は、背骨を中心とする左右の体表面温度は一定になるように、自動的に生体恒常性によって整えられています。しかし、体の神経機能が乱れていると、この恒常性が上手く機能せず、背骨を中心とする左右に温度差が生じます。この温度差をより正確に、微細に計測する事が可能にしたのが当院の特許計測器です。
何故背骨の左右の温度を比較するのかというと、背骨の中には脊髄があります。この脊髄から左右に神経が枝分かれしており、脊髄の部分では病変が無ければ神経機能は正常です。そして左右に別れた神経は、背骨の椎間孔という狭い穴を左右で通過しています。つまり、この椎間孔を出た直ぐ根元の部分が、丁度背骨の両側に位置するのです。出来るだけ根元で計測した方が精度が高く測れるからです。